惜別  最期の電話

彼と出会ったのは15年以上前のことです。
以前勤めていた不動産会社の先輩でした。
先輩といっても年齢は私より5歳下でしたが。

その会社で私も彼も営業職でよくトップを競い合ったものです。
もともと技術職であった私ですが
営業成績もかなり良いほうでした。
そんなこんなで社内では妬みややっかみもあったのですが
彼は私をよく理解してくれて
私の努力や能力についてよく褒めてくれたものです。

彼自身、すごく美男子で営業スタイルもスマートでした。
私と彼はお互いがお互いの努力や能力を認め合っていて
またお互いにサポートもし合ったものです。

そして当時はお互い若かったこともありよく遊びました。
ミナミの繁華街を闊歩したものです。
30歳を過ぎてから知り合った友人なのに
まるで幼なじみのような関係であったと思います。

そんな彼とも最近は年に数回飲みに行く程度の付き合いが続いていました。

その彼が20日の夜、突然亡くなったとの訃報が
昨日、届きました。
42歳にして早すぎる死です。

しかし、実はその彼から亡くなった日の昼間に電話を貰っていたのです。
お互い電話をすると言えば飲み会の約束をするときだけだったのですが、
その日は違いました。

彼は車で移動中だったようで
「しょうむないことでゴメン」から始まった電話は
道を尋ねる内容でした。
彼自身、その辺りは土地勘もあってわざわざ電話で聞く必要もない筈です。
普段は電話でもお互い毒舌で話すのですが
その日は変にやさしい口調で彼はしゃべっていました。
なんかいつもと違うなと怪訝に感じていました。

その数時間後に彼は亡くなったらしいのです。
よく人が亡くなる前に古い友人を突然尋ねたり電話したりして
挨拶をして回ると聞いたことがありますが
今回も偶然ではないと思います。
もちろん本人も自分が死ぬとは意識していなかった思うのですが・・・。

昨夜は大切な友を亡くした寂しさに打ちひしがれました。

中村勉くん、安らかに眠ってください