ナサホームの20年(6)

  第2部

  1. 会社設立まで
    子供の頃から漠然と考えていた独立のときがやってきました。なぜ子供の頃から考えていたからというと、先にも記した通り幼い頃に父親の経営する鉄工所が倒産し貧乏暮らしを余儀なくされていたので自分は失敗しない会社の経営者になることが人生の目標だったのです。
    よくいろいろな会社の創業時の話の中で創業者が「世間の人々が○○で不便をしているのを見て、日本中の人々を幸せにしようと思ってこの会社を設立しました」とか「この業界に入って業界の慣習はおかしいと強く思い、業界の悪習を正そうと自分で創業しました」と言う人がよくいます。物語としては素敵ですが恐らく後付だと思います。当時の私もそんな高尚なことは考えもせず、ただ経営者になって成功することだけが夢でした。後から私利私欲以外のいろいろな想いが集積してきてそういう素敵な物語に変化していくものだと思います。私もそうでした。
    平成8年、35歳の少し遅すぎる独立です。9月に日住サービスを辞め新会社設立準備に入りました。有限会社より株式会社の方が聞こえが良いだろうと言うだけの理由で株式会社に決めましたが資本金1000万がありません。当時貯金が400万、身内に貸していたお金を無理やり取り立てても600万。 あとは・・・・。クレジットカードで借りまくって950万円。あとの50万は当時乗っていたボロ車を現物出資としてなんとか帳尻をあわせました。
    会社設立に走り回って事務所も都島本通に借り、宅建免許もとって会社が出来ました。出来たときの感想は、昔から目標にしていた割に設立なんていとも簡単にできるんだなあと言ったところでした。しかしそこから先を考えた場合、大変です。太い人脈があるわけでもなくチラシの反響に頼るのみ。いままで大手の看板で仕事をしていたからチラシの反響も読めたけれど、さて一人でチラシを打って電話が来るかどうかは未知数です。
    1000万の資本金も不動産協会の加盟金や事務所の保証金、内装費、事務機器等で残りは200万しかありません。とりあえず国民金融公庫で1000万借りて合計1200万で営業開始です。月の経費が約100万、自分の給料はとりあえずゼロ。自分の収入は利益が出てから考えようと思っていました。しかし10ヶ月売上ゼロなら破産。チラシを打って無反応ならありえることです。 この時強く思ったことは「今まで取引先の不動産会社でアホな社長が沢山いたけどあんなアホなおっさんでも会社を何年も継続させいてる。だからある意味たいしたもんやなあ。」ということをまじめに感心していました。
    また事務所の内装工事をする際にこんなことがありました。当時まだリフォームをすぐに自社でするつもりはなかったので他業者に見積をとりました。1社はサラリーマン時代の取引業者、もう1社はチラシで見て電話した業者でした。結果は知合いの業者は220万円、チラシの業者は350万でした。チラシ業者の現調時に「失礼があったらいけませんので先に言っておきますが相見積はとりますよ。」と伝えると「うちが値段高かったら言ってください。合わせますので。」との応えでした。この時点で高くても安くてもその業者に依頼するつもりはなくなりました。後から値段を合わせたり下をくぐることは商売上とても卑怯なことだと考えたからです。コピー機をリースするときにも同じようなことがありました。これも勤めていた会社が取引していた事務機器の商社からリースすることを決めていたのですが、見積もりの際「いちいち値切るのも嫌やから最初から目いっぱい誠意のある値段出して下さいね。」と伝えておいて出た見積は5年リースで23000円でした。こんなものかと思い決めるつもりでいたのですが、オフィス家具の業者が自分のところもコピーやっているので見積もりだけでも出させてほしいといってきたので見積もりを出してもらいました。なんとほぼ同機能のコピー機が同じ5年リースで12000円。先の業者に断りを入れると「すみません、うちも頑張って11500円まで下げさせていただきます。」「最初の見積はなんやってん!」結局一社目はこちらが相場を知らないと思いだましにかかっていたのでした。しかも業界大手の〇塚商会ですから当初信用したのも無理はありません。「世の中にはお客をだましたり変に駆引きしたりでうごめいている輩がうようよいる。誠実に仕事をこなせば時間はかかっても必ずお客さんからご支持がもらえる。」と強く思いました。このことはその後の会社経営の中で基本的な考え方となっており、今、まがりなりにも会社が拡大していけるのもこの考え方があればこそだと思います。
    11月の末ごろに宅建免許が下りて12月から営業を開始しました。まあ12月はチラシをまいて地域の人たちにナサホームという会社が出来たという事を少しでも認知してもらえればいいか位に思っていましたが、結果として売買1件 賃貸1件の契約ができました。ありがたい話で本当に今でも感謝しています。余談ですがその2件のお客さんの1組は若いご夫婦でもう1組は新婚さんでしたが二組とも1年位後に離婚されました。詳しくは書きませんが二組とも最後は奥さんが強かった。