耐震リフォーム工事は住みながら可能なのか
耐震リフォームをする場合、多くの方が気になるのは工事中の住まいです。
「家族で一時的に引っ越す場所を確保しないといけないのか」
「住みながらリフォーム工事を依頼することができるのか」
など、工事中の住まいについて疑問に感じている方は少なくないでしょう。では、実際はどうなのでしょうか?
住みながら耐震リフォームをすることはできる?
住みながら耐震リフォームをすることができるかどうかは、リフォームの規模によって異なります。小規模なリフォームであれば、住みながらリフォームをしてもらうこともできるでしょう。
住みながら耐震リフォームをすると、仮住まいを借りたときにかかる家賃を節約できるメリットがあります。
とはいえ、しばらく水廻りを使えなかったり、工事にともなう騒音や振動を我慢しなければならなかったりなどの不便さもあります。また、職人さん達も家具や住んでいる人に配慮しながら作業を進めないといけないため効率が下がり、作業日数が長くなりがちです。そのため、思ったよりも費用が安くならないこともあります。
なので、先に見積もりを取り、住みながらリフォームをしたもらった場合と、そうでない場合との費用の違いについてリフォーム業者に相談してみると良いでしょう。
大がかりなリフォームは、マンスリーマンションや専用住宅などに一時的に引っ越しするのが一般的です。その場合は、細かな工事期間についても相談に乗ってくれる業者を探すようにおすすめします。そうすれば、家賃の追加料金を払わなくていいタイミングで入居できるように仕上げてくれるなどの配慮をしてもらえるでしょう。
耐震リフォームか建て替えかの判断目安は?
1981年に耐震基準が変わっているため、基本的に築年数30年以上の家は「耐震性が低い」といえるでしょう。
もし、現在住んでいる家が築年数30年以上であれば、耐震診断を受けて、現在の耐震基準を満たすために、どのようなリフォームが必要なのかを調べておく方がベターです。
耐震リフォームでは、必要に応じて基礎を強化したり、壁の補強や屋根の軽量化を行ったり、筋交いを追加したりします。耐震性の高い家にするためには、大規模なリフォーム工事が必要となることもあるでしょう。
耐震リフォームの規模が大きくなる場合はそれなりの費用が必要となるので、建て替えとの比較検討をする場合もあるでしょう。建て替えとリフォームでは建て替えのほうが費用は高くはなりますが、省エネ住宅やバリアフリー住宅などの最新性能を備えた家にできるメリットがあります。
複数のリフォーム業者に相見積もりしてもらい、耐震リフォームにするか、建て替えにするか検討してみると良いでしょう。
耐震リフォームの費用相場と基礎知識
耐震リフォームにはいくつかの工法があり、それによってかかる費用も異なります。
3種類の「耐震・免震・制震」の違いとは?
地震対策として耐震リフォームを行う場合は、耐震・免震・制震の3つの工法があります。どの工法を採用するかで耐震性は異なります。また、地震対策の工法によっても費用が大きく変わり、耐震性が高い工法ほど費用も高くなります。
それでは、それぞれの工法の違いについて、確認していきましょう。
耐震
耐震とは、地震の揺れに耐えられるという意味です。耐震工法でつくられた建物は、地震で建物が揺れたときに建物全体が倒壊せず、中にいる人が避難できることを前提とした強度に設定されます。
建物自体が揺れないようにつくられてはいないため、実際に地震が起きた場合は、揺れの大きさによっては家具が転倒する可能性はあります。また、地震が繰り返し起きた場合は、建物が倒壊する可能性も否定できません。
耐震リフォームをする場合は、
・筋交いの追加
・接合部の補強
・屋根材の軽量化
などの工事を行い、建物の耐震力を高めます。
免震
免震とは、地震の揺れを建物へ伝えないという意味です。免震工法は、建物と地盤の間に免震装置を設置することで地盤と建物とを絶縁し、地震が起きたときに建物にまで揺れが伝わらないようにする工法です。
地震時の揺れを100%カットすることはできないものの、70~80%はカットできるとされています。そのため、家具の転倒などが起きにくく、建物内部のダメージを防ぐことができるのがメリットだといえるでしょう。
ただし免震工法は横揺れには強いものの、縦揺れには大きな効果は期待できない点が指摘されています。
制震
制震とは、地震の揺れを吸収するという意味です。制震工法は、建物の外壁と内壁の間に揺れを吸収する制震装置を設置することで、地震の揺れを軽減します。
特に高さのある建物に効果を発揮し、2階以上では地震による揺れを20~50%軽減できるといわれています。免震工法よりも揺れが伝わりやすいものの、設置するためのコストは抑えられることから、建物内の揺れを軽減する目的で制震装置を設置する一般住宅も増えているようです。
耐震リフォーム費用の目安
耐震リフォームにかかる費用は、リフォームを考えている家が旧耐震基準で建てられたか、それとも新耐震基準で建てられたかで変わってきます。
築年数30年以上の建物の場合は、建物自体の老朽化が進んでいることにくわえ、現在の耐震基準を満たしていないため、耐震リフォームにかかる費用が高くなる傾向があります。
床面積で見る平均リフォーム費用
1階床面積 | 60㎡未満 | 60~80㎡未満 | 80㎡以上 | 全体 |
築年数 | 補強工事平均額 | |||
築19年以下 | 94万9,400円 | 93万6,727円 | 96万5,200円 | 94万9,854円 |
築20~29年 | 119万4,655円 | 129万8,028円 | 150万4,329円 | 130万8,625円 |
築30~39年 | 155万0,811円 | 161万2,500円 | 196万4,677円 | 169万9,827円 |
築40年以上 | 130万0,238円 | 200万7,500円 | 253万6,765円 | 189万9,074円 |
全体 | 128万5,246円 | 148万1,344円 | 184万7,588円 | 150万8,929円 |
この表から、床面積の広さにしたがってリフォーム費用は変化し、築年数が10年上がるごとに、耐震リフォームにかかる費用が30万円前後上昇することが分かります。
リフォーム融資制度
一定の条件を満たすと、住宅金融支援機構など民間業者から耐震リフォームの融資を受けることができます。
住宅金融支援機構で融資を受ける場合、耐震性に関する基準などに適合するための工事であれば、上限は1,000万円です。
公的な支援制度については、この後の項にて詳しく解説します。
耐震リフォームで利用できる減税制度・補助金制度の例
大災害がいつ起こるか分からない状況において耐震住宅の拡充が急務です。そのため、地方自治体によっては耐震工事費用の支援制度を設けています。これを利用できれば、リフォームにかかる費用を抑えることができるでしょう。
耐震リフォームで利用できる減税制度・補助金の例を具体的に紹介していきます。
自治体の取り組み:大阪市の例 2020年4月現在
大阪市では民間住宅の耐震化率目標95%を達成するために、耐震改修にかかる費用の一部を補助する取り組みを行っています。
■民間戸建住宅等の耐震診断・改修等補助制度を利用して耐震改修工事をする場合
・対象:平成12年5月31日以前に建築された大阪市内にある民間住宅
・上限:耐震改修工事の場合、改修工事に要する費用の1/2以内。限度額は1戸につき100万円
他にも、申請者の年間所得が1,200万円以下、市民税、固定資産税、都市計画税を滞納していないなどの条件があります。詳しくは大阪市のウェブサイトをご覧ください。
出典:「民間住宅の耐震化の促進」(大阪市)
耐震改修にともなう所得税額控除 2020年4月現在
一定の耐震改修工事を行った場合、改修工事を完了した年の所得税額が一定額控除されます。これは、住宅の耐震化率を今後10年間で90%まで引き上げるために国が創設した、耐震改修促進税制です。
・対象:家屋が昭和55年5月31日以前に建築されたもので、改修前の家屋が現行の耐震基準に適合していない家屋
・上限:標準的な工事費用相当額(上限250万円)の10%がその年分の所得税額から控除
耐震改修にともなう所得税額控除の細かい要件は、耐震リフォームを検討する住まいがある自治体のウェブサイトをご覧ください。
出典:「耐震改修に関する特例措置」(国土交通省)
まとめ
住まいを耐震性の高いものにすることは家族の安全を守るだけでなく、大事な家や家財道具への被害を最小限に抑えることにつながります。記事でも紹介したように、築年数30年以上の物件は耐震性が低いことがよくあるため、耐震リフォームの必要性はより高いといえるでしょう。
耐震リフォームをする場合は、耐震診断をしてプランを作成します。また、補助金を得るためには申請続きなどが必要です。実際にリフォーム工事を行うまでに時間がかかるため、早めに計画を立てることが大切でしょう。