葺き替え工事は既存の屋根を全て撤去した後、新しい屋根を重ねることです。撤去する際には屋根内部の様子を確認できるので、下地にあたる防水シートや野地板を新品に取り替えて雨漏りを防いだり、補修することも可能です。瓦やスレート、金属屋根など種類が多い屋根材ですが、葺き替え工事をすることでご自身がご希望する屋根材に変更できます。
葺き替え工事のメリット
家の寿命がのびる
屋根全体をリフォームするので、新築時の屋根と同じ状態になります。紫外線や雨風、強風から守る機能がよみがえり、家自体の寿命を延ばすことができます。
耐震性が高まる
日本の一般家屋の主流である瓦屋根は耐久性が高いというメリットがありますが、その一方で重量が重いので建物にかかる負担が大きくなります。スレート屋根や金属屋根に葺き替えることで、負担が軽くなり耐震性の向上が期待できます。
キレイな外観に
屋根は外壁も含めて外観の大部分を占めるため、家の印象を大きく左右します。屋根を葺き替えることによって美しく清潔感のある外観を演出できるため、周囲の住宅との調和もとりやすいです。
葺き替え工事のデメリット
費用がかかる
屋根塗装や修理とは異なり、屋根材が必要なので材料費が必要です。それに加え下地の補修工事が発生した際にはその工事費用と、撤去した屋根材や下地材などを処分する費用もかかります。屋根塗装や重ね葺き工法と比較すると工事費用が一番高くなります。
近隣への影響
既存の屋根を撤去する際に細かい破片やほこりが近所に飛んでしまうことがあります。ご近所トラブルにならないためにも、葺き替え工事をする前にご近所に挨拶するなど、周囲への配慮が必要です。
屋根の種類別、葺き替えタイミング
瓦屋根
瓦屋根は、日本では一般的に古くから利用されています。熱や水に強く耐久性が非常に高いので、メンテナンスは約30年に1度の周期で済み、色あせも少ないことから美しい外観を維持できます。また、瓦同士が重なって出来るすき間が空気層となり、外の熱が伝わりにくい構造になっているので夏は涼しくなり、冬は熱が逃げにくくあたたかな家で快適に過ごすことができます。
ただ、瓦自体の重量が他の屋根材と比べて非常に重いので、家全体への負担が大きくなり、耐震性に影響を及ぼします。また費用も他の屋根材と比べて高くなります。
メンテナンスが楽とはいえ、全くしなくてよい、というわけではありません。定期的な点検は欠かさないようにしましょう。
⇒瓦屋根葺き替えタイミング
漆喰(しっくい)とは、瓦の隙間を埋める白い部分のことです。これが剥がれてくると、屋根の隙間から浸水し、雨漏りなどが発生してしまいます。漆喰は10年ほどで塗り替えるのがベストですが、このメンテナンスの際に瓦の状態もチェックしましょう。瓦に割れやズレが数枚程度見られるのであれば部分補修でも構いませんが、屋根全体に至っている場合は葺き替えのタイミングです。
また、瓦のうねりや、ゆがみ、雨漏りが見られた場合、屋根下地から劣化している可能性が高いため葺き替えが必要です。
スレート屋根
スレート屋根は、現在最も多くの住宅に使用され、種類も豊富で施工のしやすさが人気です。瓦よりも軽量で建物にかかる負担が少なく耐震性に優れますが、軽量なので風の影響を受けやすく割れやすい特徴もあります。劣化すると塗膜が水分を失い、カビや色あせが発生しやすくなってしまいますので、定期的な点検が必要です。特に台風や地震の後は、念入りに確認することをおすすめします。
⇒スレート屋根の葺き替えタイミング
棟板金とは、屋根の頂点にある板金のことです。釘抜けやゆるみがある場合は部分補修で済みますが、サビや穴あきが見られる場合は塗装や交換工事が必要です。スレート屋根は表面に施される塗装が防水性を失うと、屋根表面にカビやコケが繁殖してしまいます。屋根がボロボロになってしまった際にはスレート自体が劣化しているので葺き替えが必要です。また、雨漏りなどの防水シートが劣化している場合も葺き替え工事が必要です。
金属屋根
金属製のガルバリウム鋼板は亜鉛とアルミで作られている屋根材で、耐用年数が長く、価格も比較的安いことから、近年では非常に人気です。デザイン性にも優れていて、光沢が美しく、屋根にモダンな印象を与えます。また、軽い素材なので家の構造に負担をかけず、強い耐震性が安心感を与えてくれます。ただ、金属という性質もあって屋根に水たまりができている場合、サビが発生する可能性があるので注意しましょう。
⇒金属屋根の葺き替えタイミング
スレート屋根と同じく、棟板金が劣化や屋根がサビてしまっている場合、屋根の状態によっては部分補修や塗装、重ね葺きで構いませんが、下地の劣化が見られる場合は葺き替えが必要です。穴あきまで見られる、めくれてしまうなども下地まで影響を及ぼしているので葺き替え工事が必要です。
屋根葺き替え工事にかかる費用相場
新しく設置する材質や屋根の大きさによって金額が変わってきますので、以下の例はあくまで参考としてご承知ください。
屋根材の施工費用に加え、足場の設置費用、既存の屋根の撤去処分費用、下地補修費用の4つが必要です。
一般的に費用相場はトータルで70万円~140万円です。
屋根葺き替え工事の相場価格
工事項目 |
相場価格 |
日本瓦(和瓦)/洋瓦 |
8,000~15,000円/㎡ |
スレート(カラーベスト/コロニアル) |
5,000~7,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 |
6,500~8,000円/㎡ |
足場 |
1,200~1,500円/㎡ |
既存屋根の撤去費 |
1,500~3,000円/㎡ |
付帯工事(雨樋) |
2,000~3,000円/㎡ |
下地補修費 |
2,000~3,500円/㎡ |
防水シート |
500~1,500円/㎡ |
屋根葺き替え工事の工程と期間
平均的な屋根の葺き替え工事の施工期間は7日~10日です。
1日目:足場を組む
職人が安全に作業するために、工事の安全性を高める足場を組みます。
2日目:古い屋根材の撤去
屋根に使用されている屋根材を外します。
3~4日目:下地(野地板)の張り替え
野地板の劣化や傷み具合によって作業内容や日数が変わってきます。
5日目:防水シートの設置
野地板の上に防水シートをはる作業です。防水シートは屋根材の隙間から雨水の侵入を防ぎます。
6~7日目:屋根材の取り付け
接合部に防水処理を施しながら屋根材を取り付けます。
8日目:足場解体、清掃
施工が終わった後、足場の解体と清掃作業を行います。
屋根の塗り替え(塗装)について
塗り替え(塗装)とは?
屋根の塗り替えとは、劣化した塗装に塗りなおしのメンテナンスを施すことです。約10年の周期で定期的な塗り替えをすることによって家の機能を長持ちさせることができ、外観を美しく維持します。
塗り替え工事のメリット
屋根材を再塗装することで防水性が回復して耐久性が高まり、雨漏りや腐食のリスクが軽減されます。断熱・遮熱効果のある塗料を使用すると、節約にもつながります。夏場は屋根表面に発せられる熱を遮ってくれるので室内の温度の上昇を抑えられ、冬場は屋根表面から逃げる熱を逃しません。周期的なメンテナンスをしっかり心がけておけばコストが安く抑えられ、費用のかかる葺き替え工事という規模の大きな修繕工事を行わなくて済みます。そのほか、抗菌・防サビ性を発揮するもの、美しい外観を保つための機能をもったものなど、さまざまな種類の塗料が存在します。
塗り替え工事のデメリット
塗装前の高圧洗浄やサビ落としが不足していると下地と塗膜がうまくくっつかず、はがれる原因となってしまいます。また、屋根材に合っていないものや質の悪い塗料を使うことも同様です。塗料の塗りすぎは逆効果になり、雨漏りを引き起こしてしまう場合がありますので注意が必要です。
塗り替えのタイミング
屋根塗装は、外見の美しさを維持するだけでなく、屋根の劣化や腐食を防いでくれる保護の役割があります。もし長い間メンテナンスを怠りそのままの状態に放置してしまうと、塗料の防水性の効果がきれることで内部へ水が浸入し、雨漏りが起きてしまいます。
瓦屋根の場合、10年前後で表面にコケや色あせがでてきます。長い間放置してしまうと、ひび割れの原因になってきますので定期的な塗装がおすすめです。
スレート屋根の場合も屋根材の防水機能が切れて、表面にコケや藻が出てきます。こちらもひび割れの原因になりますので10年単位のメンテナンスが必要です。
金属屋根の場合、色あせやサビは塗り替えのサインです。メンテナンス間隔は約10年といわれておりますが、沿岸沿いの地域や酸性雨が降る地域の場合は、間隔が早まる可能性が高くなります。
塗装工事にかかる費用相場
屋根塗装の費用は大きく分けて4項目に分類されます。
※塗装の費用内訳 = 「塗料代」+「工事代(人件費)」+「足場代」+「利益」
●塗料代
塗料は機能性や耐久年数によって単価が異なってきます。つい単価に目がいきがちですが、単価の低いものを選ぶと塗料の効果が長持ちせず、塗り替えまでの時間が短くなってしまうことがあります。はじめから耐久年数が長く機能性のある単価の高い塗料を選んだほうが、結果的にお得になることもあります。詳しくは右述の「塗料ごとの単価・耐用年数・特徴」をご覧ください。
工事代・足場代
工事項目 |
相場価格 |
足場 |
1,200~1,500円/㎡ |
高圧洗浄 |
100~300円/㎡ |
養生 |
250~400円/㎡ |
施工費 |
1,000~2,000円/㎡ |
諸経費(現場管理費) |
一式 30,000円~50,000円 |
諸経費(廃材処理費) |
一式 10,000円~30,000円 |
塗料ごとの単価・耐用年数・特徴(主流の塗料)
塗料の種類 |
単価 |
耐久年数 |
特徴 |
ウレタン樹脂塗料 |
1,600~2,100円/1㎡ |
7~10年 |
アクリル塗料に比べるとやや紫外線に強く、耐用年数も少し長く、塗料が柔らかいので木部や鉄部などさまざまな部分で使えます。 |
シリコン樹脂塗料 |
2,000~3,000円/1㎡ |
10~13年 |
汚れにくく、耐久性が高いことから非常に長い耐久年数を発揮します。コストパフォーマンスにも優れているため、現在戸建て住宅の塗装で最も使われています。 |
フッ素樹脂塗料 |
3,500~4,500円/1㎡ |
15~20年 |
従来の屋根塗装で最も強いフッ素塗料にフッ素化技術を取り入れた高耐久な塗料。屋根は紫外線や風雨にさらされ劣化が早いですがフッ素塗料ならば長期間に渡りスレート屋根や金属屋根の防水性を守れます。一度の施工で長期間屋根を守れるので、経済的にもお得です。 |
屋根塗装の工程と期間
1日目:足場を組む
職人が安全に作業するために、工事の安全性を高める足場を組みます。
2日目:塗装前の洗浄
高圧洗浄機を使って外壁の汚れやほこりを除去します。新しい塗装の機能を発揮させるための大事な作業です。
3~4日目:下地処理
ひび割れ箇所を修復し、サビを取って塗装面を整える「ケレン」という作業を行います。とくに問題がなければ1日で完了しますが、劣化が進んでいる場合は数日かかってしまうこともあります。
5~7日目:塗装作業
塗装の工程は3回塗りで、まず「下塗り」を行います。シーラーという下地強化剤で丁寧に塗ることで、塗料の剥がれを防ぎ、後の工程の土台をしっかり作ります。下塗りが完全に乾いたら次は「中塗り」「上塗り」作業です。
8日目:縁切り
スレート屋根の場合、塗料で屋根材同士がくっついてしまうと通気性が悪くなりカビや雨漏りの原因となります。屋根材の隙間を作るために、専用のカッターで塗料を取り除きます。
9日目:点検、手直し
施塗り残しや塗りムラがないかを点検し、最終的な確認を行います。
10日目:足場解体、清掃
施工が終わった後、足場の解体と清掃作業を行います。
屋根の重ね葺き(カバー工法)について
重ね葺き(カバー工法)とは?
重ね葺きは、既存の屋根の上に防水シートと新しい屋根材を重ねて取り付ける工事のことです。スレート屋根や軽量の金属屋根などのような平らな屋根材の上に重ねて施工が可能です。屋根を剥がして新しく取り替える場合は、解体費と処分費用がかかるために費用がかさみますが、重ね葺きはその必要がありません。短期間に低コストでリフォームできる人気の工法です。
重ね葺き工事のメリット
既存の屋根に新しい屋根材を重ねる二重構造となるため、断熱性や遮音性、防水性の機能が向上します。屋根を交換する作業がないので、取り除いた屋根材の処分費がかからず人件費も削減でき、リフォーム全体にかかる費用が安価です。また、工事の際の騒音やほこりなどが原因でご近所トラブルになるといった事態も避けることができます。葺き替え工事の場合は、屋根の撤去や養生といった工程が必要ですが、カバー工法ではその工程を省略できるため納期が最大で2週間程度で済むことも魅力です。
重ね葺き工事のデメリット
屋根が二重に取り付けられているので重量が増えてしまい、耐震性に影響する可能性があります。ただ、スレート屋根に軽量な金属屋根材を重ね葺きでおこなったとしても、瓦屋根の重量よりは軽くおさまることが多いので、ほとんどの住宅には問題はないといえます。気を付けないといけないのは構造上、気が付きにくい屋根の下地や内部の劣化です。補修せずにそのまま放置してしまうと、雨漏りを引き起こし、最悪の場合はコストのかかる葺き替え工事といった全面はり替えを余儀なくされるケースもあります。
重ね葺き工事のタイミング
重ね葺きは、屋根の下地材や内部の劣化、傷みがある場合はその箇所を補修してから行う必要があります。下地劣化や耐震性の不安がない状態であれば、リフォーム費用も安く抑えられるのでおすすめします。また、古い屋根の撤去作業がないのでホコリや騒音トラブルといった事態を避けることができます。小さなお子様やご高齢の方がいらっしゃるなどご家庭の状況によって、ストレスの少ない工法を選ぶのも1つです。
重ね葺き工事の費用内訳は、屋根材料や足場代、職人さんの人件費と工事代、そのほか諸経費です。
使用する屋根材によって金額が異なります。
工事代・足場代
工事項目 |
相場価格 |
足場 |
1,200~1,500円/㎡ |
防水シート |
500~700円/㎡ |
屋根材 |
5,000~7,000円/㎡ |
棟板金 |
4,000~5,000円/m |
工事管理費 |
10,000~30,000円 |
重ね葺き工事の工程と期間
1日目:足場を組む
職人が安全に作業するために、工事の安全性を高める足場を組みます。
2日目(半日):棟板金の撤去
屋根に使用されている屋根材を外します。
2日目(半日):防水シートの設置
雨漏りを防ぐ防水シートを敷きます。
3~4日目:新しい屋根材の施工
防水シートの上から新しい屋根材を重ねていきます。
5日目:棟板金の設置
屋根材がしっかり固定されるようにビスなどを使って棟板金を取り付けます。
6日目:足場解体、清掃
施工が終わった後、足場の解体と清掃作業を行います。
最後に
「屋根リフォーム工事の基礎知識」をお読みいただき、屋根の葺き替え工事をはじめ、塗装や重ね葺き工事についてご理解いただけたかと思います。屋根工事を行うにあたって大切なことは、ご自宅の屋根の劣化や傷み具合、屋根下地から外観までを把握し、状況に合ったリフォーム工事を行うことです。工法によって費用に違いはあるにしても、大きな費用がかかることは間違いないです。ご自身で簡単に決めることはせずに、基礎知識をふまえた上で業者に相談することがベストです。
なにから確認すれば良いかわからない、おおよその金額を教えてほしいなど、
「ご相談は無料」となっておりますので、お気軽にご相談ください。