住まいの外壁をきれいに保つ、軒の設置&延長リフォーム

マイホームを建てるときに意外と見過ごされがちなのが「軒」です。 なにしろ軒が無いほうがスッキリとした外観を演出し、スタイリッシュな印象を与えるとして、最近では軒ゼロ住宅が増えています。 ところが、一戸建ての軒には、雨風や日差しから建物を守る重要な役割があるのです。 今回の記事では、あらためて軒のメリットやデメリットを理解しながら、軒のリフォームについて詳しく紹介してまいります。


この記事は約6分で読み終わります。

そもそも軒はどのような役割を果たしているの?


一戸建ての壁や窓、そして玄関にも、重要な役割を果たすという軒。そのメリットだけでなく、少なからずデメリットもありますのでしっかりと確認しておきましょう。

家の軒ってどの部分を指すの?

軒とは、住宅や建物の屋根のうち、外壁や窓よりも外側に突き出ている部分のこと。
一般に、外壁を取り付けている柱の中心から外側にある部分の長さのことを「軒の出」と言います。その長さを測る場合は屋根の勾配部分ではなくて、水平方向で測ります。

■軒先・軒下・軒天
軒にも部位によって呼び名があります。
軒先は、軒の先端部分のことで、通常は雨樋が付けられている部分をさします。
軒下は、軒の下に広がる空間のことです。
軒天は、軒の下面、裏側のことで、軒裏とも呼びます。火災が起きても延焼しにくい材質で作られていることが多いです。

意外と重要! 軒があることのメリット&デメリット

軒の重要な役割をメリットとして見てみましょう。

■日差しから守る
夏、窓から入ってくる暑い日差しを防ぎます。室温の上昇をやわらげ、冷房費も抑えることにもなります。
冬は逆に日射角度が低いので、日差しを遮ることにはならず、室温の低下を抑えます。

■雨から守る
軒は雨漏りを防ぎます。軒がないと外壁に風雨が直接あたり、経年劣化も加わってひび割れが起きて雨漏りの原因となるからです。
また、窓の上にある軒は雨除け、窓からの雨水の吹き込みを防ぎます。

■外壁を守る
紫外線が強い太陽光や風雨から外壁を守ることで、住まいの耐久性低下を防ぐことにもつながります。特に木造住宅においては差が出ると言われています。

軒があることでデメリットも出てきます。

■風による負荷
外壁に当たった風が吹き上がると軒をあおることになり、建物に負荷がかかります。耐風性が低下するのです。

■コストがかかることも
経年すると、軒が深いと、メンテナンス費用が余計に必要になるでしょう。

■深い軒が作れない場合も
軒の出が1mを超えた分は建築面積に加算されるので、建ぺい率を考えると、新築ならそれだけ居住面積が狭くなります。
建ぺい率いっぱいの既存の住宅なら1mを超える軒は無理と考えねばなりません。
もちろん、上空にある軒であっても、道路境界線や隣地境界線の境を越境できません。
また、長い軒が可能だとしても、日差しを遮る分、室内が暗くなります。

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軒を延ばす場合はどのようなリフォームを行うの?


既存の一戸建ての軒を延長するには、さまざまな制限を加味したプランが必要です。どのようなリフォームがあるのでしょうか。

軒を出す、新たにつけるリフォームについて

■軒を延ばすリフォーム
軒の延長リフォームは、屋根の先端の雨樋がついている側や、ついてない側(ケラバ)の屋根材の撤去から始まり、次のような施工を行います。
・延長する屋根部材の取付作業
・木製部材の塗装(防水・防腐処理)
・板金施工
・軒天施工
・雨樋取付作業
支柱が必要になる場合は、その基礎工事も加わります。
また、軒天材には、耐久性や耐水性、耐火性の高いケイカル板(ケイ酸カルシウム板)を使ったり、湿気対策として換気用の穴が開いた有孔ボードを使用したりします。

軒の適切な長さはどのくらい?

■軒を延ばす長さは900mmが目安
軒のデメリットでも触れましたが、軒の出が外壁を取り付けている柱の中心線から1mを超えると建築面積に加算されます。
建ぺい率に達していない建物なら1m以上も可能かもしれませんが、建ぺい率いっぱいの住まいが多い都心などでは、軒を付け足す長さは「900mm」を目安に考えてみましょう。
「900mm」という長さは、太陽高度が高い夏は日差しを遮り、高度が低い冬は日差しが入るようにする、程よい長さだと言われています。

庇という選択肢も

■先付け用と後付け用がある庇
屋根を延長できない場合は、窓や玄関のすぐ上に庇を付けてみてはいかがでしょう。
庇には家を建てる際に取り付ける先付け用、建った後なら外壁に直接ビスを打って取り付ける後付け用があります。
後付けは外壁を壊すことなく比較的簡単に取り付けられます。材質としては、アルミ、ガラス、ガルバリウム、ポリカーボネードです。
ただ、コンクリート造や鉄骨ALC造の外壁には取り付けられない場合が多いので注意しましょう。

軒や庇の大きさによって固定資産税や都市計画税が増加する場合も

軒の出1mまでは建築面積に含まれないことはすでに述べました。
もし建ぺい率をクリアして1m以上の軒や庇を作れたとしても、税金が増える可能性を考えねばなりません。
建築面積は、建物を真上から見たときに計測した数値で、軒や庇が1m以上延長すると建築面積に加算されます。
すると固定資産税や都市計画税は建築面積などを考慮するため、延長したことで税金が増える場合もあるのです。
1mを超える場合、税金についてもしっかり調べておきましょう。

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軒を延ばす費用について


軒を延長した場合の材料費や施工費、工期はどのくらいになるでしょうか。

軒の延長に必要なリフォーム費用

軒延長のリフォーム費用は、一般的に平方メートル単価で見積ることが多いのです。
材料費+施工費=50,000/㎡円〜80,000/㎡円。
足場設置が必要な場合は、1,000円〜1,300円/㎡が必要となります。
施工期間は5日〜20日。

後付け用庇の費用は?

先ほど触れた後付け用庇の本体価格はどのくらいなのでしょうか?
出幅900mm×幅 900mm=16万〜20万円程度
出幅900mm×幅1,200mm=12〜13万円程度
出幅900mm×幅2,000mm=16万〜20万円程度
後付けの取付作業の費用は、4万〜10万円前後が相場です。
施工期間は1~2日間程度。

軒がないほうが良い地域や立地条件について

・豪雪地帯
雪がたくさん積もる豪雪地帯だと、軒先が積雪荷重に耐えきれずに折れることがあります。軒先が折れると雨漏り等で建物の構造体に被害を及ぼしかねません。その場合、早急な補修が必要となりますので、豪雪地帯での軒の延長はおすすめできません。
・隣家が接近する場合
隣の家との間が人さえ通れないような立地では、軒を延長したり、庇を付け足したりするのは厳しいでしょう。
たとえ隣家と少し離れていて延長できたとしても、軒先からの雨が隣家の土地内に流れ落ちる場合もあります。トラブルのもとになりますから、きちんと計測する配慮が必要です。

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まとめ

軒があることで住まいの劣化を防ぎ、冷暖房費も抑えることになりますが、その反面に暗くなり、コストがかかって、立地条件にも左右されます。一度作ってしまうと後で変更することが難しくなるだけに、ご家族でよく話し合う必要がありますが、アドバイスがほしい、相談したいという場合はぜひナサホームまでご連絡をください。現在の住まいの状況を確認しながら、豊富な施工経験から最適な軒延長に関するリフォームプランの提案をさせていただきます。